おーえる放浪記

毒親から離れ、色々なところを転々としています。ミスiD2019ファイナリスト。Twitter@MC88009062

中国と台湾に住んでいた私が考える、日本の女性が社会進出しにくい理由

1.日本の女性が社会進出しにくいのは性差のせい?

前日、Twitterでこんな意見が流れてきた。

 

「男女で適正があり、妊娠ができて出産ができる女性が社会に出て活躍するのは難しいのではないか。」

 

つまり、この方の言っていることは男女には生まれ持った性質があり、その性質は男女で違う。そして女性は妊娠出産できるなどの点から性質的に社会進出が難しい。ということを言っているのである。

 

もちろん男女に出産できないできるの違いはあるが、私は女性の社会進出を阻む本当の原因は日本の社会システム、または日本人の文化的価値観だと思う。上記のTwitterでの意見は、今の日本の社会自体が女性にとって社会進出を断念せざる負えないようなシステムの問題ではないかという視点が抜けた、根本から問題が見えてない人の意見だと思う。

 

そしてこういう考えの人は日本人にわりと、多いとも感じる。なので今回は私の中華圏での経験を交えた考察をこのブログに書くことにした。

 

2.中国と台湾、女性の社会進出と女性政治家。

 

私は中国に4年、台湾に1年ほど住んでいた。私の遺伝子も中国にルーツがある。生活していて気づいたことは中国、台湾は夫婦の共働き率が高い。まず、専業主婦は少ない。2017年5月、中国の女性の労働率は欧米を上回った。台湾は2016年のデータによると、60歳以下の就労率は男性が66.9%に対して、女性は50.7%となり女性政治家も多い。2018年4月現在の日本の国会における女性議員の割合は衆議院で10.1%、参議院で20.7%、列国議会同盟の各国下院の調査では世界193カ国中158位とかなり低い。それにくらべ、中国は72位と世界平均以上、台湾に至っては21位とアジアではトップクラスだ。なぜなのだろうか。

 

3.中国と日本の女性の社会進出に関する環境の違いと考察

以下に私が実際に経験した事、見た事や聞いた事から中国と日本の女性の社会進出に関する環境の違いと、そこから考えられる日本女性が社会進出しにくい理由をいくつか書いてみた。

 

①核家族化の日本。拡大家族型の中華圏。

まず、家族関係の違いがある。日本の場合、一緒に生活している家族構成は母親と父親、子供という形が増えつつあるが、中華圏になると核家族化は進んでいるようだが祖父祖母と住んでいる家族は多い。また、親戚との関係が日本より密で、お互いの家族が近くに住んいれば、頻繁に会いに行き、家事の手伝い、親戚の子供の面倒を見たりとお互い助け合いながら生活している。特に「ありがとう、悪いね。」などの言葉もなく、いろんな人が代わる代わる子供を抱っこして、子供が泣いてしまっても母親が抱いて外に出ていくこともなく、みんなであやす風景をよく見た。日本の場合はその点、「母親が一番に子供のおもりをする」という価値観が強くある気がする。親戚の中でも子供の母親がずっと子守をしていて、子供が泣くと母親が子供を抱いて外に出ていく印象だ。日本はとりわけ母親となると負荷が大きいのではないか。

 

②家政婦文化が発達している。

中国の都市部と台湾に住んでいる家族は、一般的な家庭でも、家政婦を雇っている家庭が多い。しかも、だいたい家政婦は住み込みで働いている。中国では地方から出稼ぎに来る女性が多く、台湾ではインドネシアから家政婦として出稼ぎにくる女性が多い。それぞれ、家政婦ネットワークがとても発達していて雇う賃金も日本より安く、家政婦たちの教育も行き届いている。何より介護の面では家族と一緒に過ごしつつ家政婦に世話を見てもらえるのでメリットが大きい。日本ではどうしても部外者を家に入れることに抵抗がある家族が多い上、家政婦を雇う賃金も高額。それに加え「家事と料理は妻が手を抜かずやるもの、夫の両親は妻が面倒をみるもの」という古い考えがまだまだあるため、家政婦文化が発達しないも女性の社会進出を阻む原因なのではないか。

 

③食事は外食が多い。もしくは質素。

台湾に旅行に行ったことのある人なら知っていると思うのだが、台湾では毎日、お祭りのような比較的安価に食事がとれる屋台がそこら中に出ていて、そこで夕食を済ませる人が多い。私の台湾人の友人は家族で週に5回は屋台で食事をするそうだ。つまり、食事を作ったり食器を洗う負担がない。中には生まれてから数回しか両親の手料理を食べたことがなく、毎日ほぼ外食という人もたまにいる。日本人は毎日外食と聞いて健康に悪いと顔をしかめる人も多いと思うが、台湾の屋台は値段も安価で、野菜やフルーツもしっかり摂れる。また、台湾人の一番多い職業が飲食業であることにも外食が一般的であることが伺える。では、中国ではどうなのかというと私のルーツである北京での食事は一品料理とご飯というかなり質素なものであるため、日本の食卓に比べれば食事を作る負担は少ない。しかも料理は家政婦さんの仕事だったりする。

 

③経済的要因。

中国、台湾に関しては人件費が日本より安いという問題があり、ほとんどの家族が共働きでないと生活できない。また、台湾ではこの人件費の低さについて社会問題になっており、収入に対して家賃もすこぶる高いため、必然的に妻の労働力が必要とされる。夫婦ともに働く必要があるため二人の力関係が平等になりやすく、子育てや家事の負担が、どちらかに掛かりにくいのだと私は思う。夫の稼ぎだけでも生活ができる家庭の多い日本では「働きたいけど旦那の収入だけで生活できるし、旦那より稼ぎがないから」と働くのを諦め、子育てと家事に専念する女性が多いのではないか。

 

④子供及びその母親に対する寛容度の高い国民性。

日本人は「人様に迷惑をかけるな」という考えがとても強い。そのため、公共の場では子供が泣いてしまったり、暴れたり、大声を出したりするから、と子供との外出を控える母親も多い。妊娠中でもお腹が大きい姿、または妊娠による発汗を「みっともないし、みんなが気を遣うから」と言われやむなく、早めに産休をとったという話も聞く。その点、中国圏では子供の自由奔放さを周囲はそこまで気にしない印象がある。というより、みんな子煩悩な印象がある。上海の地下鉄に乗っていた時、私は5歳くらいの子供から「座りたいから席をゆずれ」と言われて、足を蹴られたのだが、周りの乗客はみんなニコニコして子供に席を譲っていた。中には笑顔で「生意気だなあ、将来はボクサーかな。小学生なの?」と子供に、からかいながらも優しく話しかける、お兄さんもいた。彼女連れだった。母親も笑顔で蹴ったことに対して「こぉら、やめなさい」と言うくらいだった。中国人の親子が電車に乗っていて子供がやりたい放題でも母親はさほど気に留めないのは、こういった中国人の国民性によるところから来るものだと思う。また、妊娠に関しても割とみんな臨月ギリギリまで働く女性が多い。日本は産休が多くて羨ましい。みたいなことを言われたこともあるが、中国圏はまず働き方が日本と違う。中国のスーパーやコンビニ、会社の窓口に行くとたまにお腹の大きい女性が対応してたりする。無理しないように椅子に座っていたり、リクライニングチェアに寝っ転がっている人もいた。レジの後ろにある商品を注文したら「お腹しんどいから自分でここまで入って取ってちょうだい」と言われたこともある。このように中国圏では社会的に寛容度が高く、女性側も他人に気を遣わず過ごしている。

 

⑤男女平等のための改革の速度。

台湾に住んでいた時、私の借りていた部屋の大家さんが女性だったのだが、夫婦別姓だった。そしてその二人の息子も別姓だった。「え?離婚したの?」と日本人なら思うだろう。だがそうではない。台湾では結婚しても夫婦別姓が認められていて、またその子供も夫婦同士でどっちの姓にするか決めるらしい。夫婦同士で決められない場合は政府機関によって「くじ引き」で決めてもらうのだそう。なんだかこの話を聞くと台湾はもともと男尊女卑のあまりない国だったのではないかと思うかもしれないが、全然そうではない。むしろかつては男尊女卑の思想が強かったのだが、女性の政治家が増えたこともあり急速に改革がされ、国民の意識が変わったのだ。なのでちょっと前は台湾も日本同様、妻が夫の姓になり子供も夫の姓を名乗っていたのだが、ここ数十年の間にそこまで改革がされたことに感動を覚える。日本はその点、どうだろう。

 

⑥女性が感情的になることが普通の事とされている。

これはおまけで書くのだが、上海に住んでいたころ、私の隣人がたまにめちゃめちゃ夫婦喧嘩していた。女性の「死ね」だの「殺す」だのいう金きり声が外国人の隣人である私にまでハッキリ聞こえていた。そしてその合間合間に男性の「ごめんよぉ」「わかったよぉ」みたいな声も聞こえていた。二人は普段から仲が悪いわけではない。二人でマンションの下にあるベンチの上で奥さんが旦那の膝に座ってイチャついているところを何度も目撃している。そんな関係の旦那であっても中国の女性はそんな怒り方をする。私の中国人の母親もそうだった。さらに言うと、私は中国で初めて中年女性同士の殴り合いの喧嘩も目撃したことがある。これが良い事なのか悪い事なのかよくわからないが、これを知る私としては日本の女性は全然、怒らないなという印象だ。私の既婚者の友人は旦那さんと喧嘩をして感情的になった時「ヒステリー」だの「頭がおかしい」だの言われたらしい。女が感情的になることってそんなにダメなことなのか?と思う。女性の政治家や会社員が「女はすぐ感情的になるから〇〇に向いてない」などと言われ、ステップアップを阻まれるのも、日本で女性が社会進出しにくい要因なのではないか。

 

以上、参考資料もよければそれも見てほしい。この文章を読んで日本の女性が社会進出しにくい原因を今一度、考えてもらえれば幸いだ。

 

参考資料

台湾の男女格差とジェンダー|働く女性の社会進出が進んでいる!?

中国の女性労働率が欧米を上回る=「平等と進歩の印」「これ...|レコードチャイナ

第26回 台湾の姓について(1)夫婦別姓が原則!! - ワイズコンサルティング@台湾