おーえる放浪記

毒親から離れ、色々なところを転々としています。ミスiD2019ファイナリスト。Twitter@MC88009062

セクハラを許容した先に待つものとは

女の子たちに話したいことがある。この話はとっても大事な話で私と今を生きる女の子への話。

 そして先の未来を生きる女の子たちのための話。

 

私は男性から卑猥なことを言われると叱る。「そんなことを言ってはいけない。」と。そんなときいつも「真面目」だの「厳しい」だの言われる。その言葉には少々「この人過敏すぎる」みたいな意味も含まれていることもひしひしと感じている。しかし、わたしはいたって普通で常識的で真っ当なことを言っている。なぜ私が変な人扱いされなければいけないのだろうか。

メイドの仕事をしているとは「そんな格好をして何を言っているんだセクハラもクソもないじゃないか」と言ってくる人も少なからずいる。私は個人的にメイド服を「そんな格好」とは思っていないが肩出しメイド服を着ているからと言ってセクハラしていいわけではないのも分からないのかと落胆する。

私は以前、一般企業に勤めていた。中国語が話せるし、現地では高学歴だと言われる大学で教育を受けた。授業態度も真面目だったし論文はクラスで二番目の評価を受けた。入社したほかの男性社員もそれくらいの実力を持っていた。

それでも私の扱いは他の男性社員男性と平等でないと感じた事が多々あった。

飲み会では私だけなぜか偉い人の横でお酌しなきゃいけなかったし、卑猥な話が始まって私が不快な顔をすると後で上司から呼び出されて怒られた。同僚の男性まで上司の機嫌をとるために私を飲み会に呼びたがったし、営業のために一人で取引先の既婚者の方と二人で朝方まで飲んで契約を取ってきたことをまるで武勇伝のように語り、私にもそうなるようにすすめてきた。他の女性に相談しても受け流すのも仕事のうちだと言われたり、私が飲み会を拒否するとなぜか他の女性たちから表立ってではないが少なからず批判があったらしい。

「その場の雰囲気が悪くならないように、セクハラは上手く受け流しなさい。それこそいい女。」「雇ってもらってるんだからそれくらい我慢すればいいのに。キャリア組でとってもらったんだから頑張ってほしいのに。」女性たちからそんな風にいわれた。

私の先輩女性社員や、取引先の女性は膝を触っても怒らないし、彼氏の話やシモの話もしてくれるのに君は怒るから好きじゃないと言われたりもした。「女という立場をうまく使えばいいのに」みんなそんなニュアンスで私をなだめようとする。

自分より優秀な年下女性が嫌いな男性もいた。コンプレックスの多いオジサンに多い。私の学歴を聞いて「頭がいい女はモテないから馬鹿なフリをするといい。でないと婚期が遅れる」とクソみたいなことを言ってきた。

男性が投げかける卑猥な言葉は私の「女」という情報以外を無視し、否定する。お前が今まで勉強したこと、努力、生きた時間、経験はすべて無駄だと。女であることにしか価値がないと。それは私の自尊心と私を大学まで行かせた父親の想いも踏みにじる絶対に許されない行為だ。

みなさんはどうですか。そこまで深く考えない?私は間違っていますか?

 

では許容した先に何があるのか。


当時、立場上、新入社員と一番弱いためヘラヘラと笑ってしまっていた。社員用に用意された部屋に帰って私はその言葉を思いだして悔しくて泣いた。その場の雰囲気を壊したくなくて、良い子だと思われたくてヘラヘラしてしまった自分が嫌いで情けなくて、後悔して泣いた。私と私の父親が今まで培ってきた私の自尊心が傷ついて、どんどんどんどん小さくなっていくのを感じた。会社に行くとずっと吐き気があった。50キロあった私の体重は2ヶ月で44キロまで落ちた。ストレスで生理も来なくなった。精神科に行ったら鬱病だと診断された。飲み会にはもう参加したくないと言ったら参加しなくてよくなったが私に仕事が回ってこなくなった。

取引先の商社に私と同い年の女の子がいた。営業に勤めて2年、活発で明るい子だった。彼女は飲み会でかなりセクハラを受けていた。キスをせがまれたり、お尻をつかまれたりは日常茶飯事でそれでも「減らないから」と笑顔で笑っていた。セクハラに悩む私に「それくらいで、気にしないほうがいい」と笑った女の子だ。既婚者のオジサンと二人きりで朝まで呑み、仕事をとってきたりもしていた。周りはその発言と行動を「たくましい」と称賛した。

数ヶ月後、彼女は急に会社に来なくなってしまった。何があったかわからない。でもわたしはその直前、眠れず強い睡眠薬を飲んでいることと、働き始めてから生理が来ないということを本人がボヤいていたのを聞いた。そして30も年齢の離れた取引先のオジサンに「キスしたら君に仕事あげる」と言われてみんなの前でキスをしていた次の日、会社に来なくなってしまったということを小耳に挟んだ。

日本の会社は時に宗教のようだ。会社での「正しさ」が社会性より優先されている気がする。私から言わせればそんなこと狂っている。

これは私の今の職場でも言える。時に周りと合わせることが「正しさ」だと思ってしまう環境にもなる。お金をくれるから我慢する。それって正しいこと?

考えてみてほしい。セクハラを許容した先に何が待っているのかを。それは私達女の子にとっていい未来なのかを。

男性は自分より立場の弱い女の子にセクハラをする。自分より体が小さくてか弱い女の子にセクハラをする。上司の妻や娘にはしない。セクハラをされるということは下に見られているのだ。下に見られていることを許容していたら私達は一生、下手したら私達のまだ見ぬ娘、孫娘までもそういう立場になってしまうのではないか。

思えば、私に「その場の雰囲気が悪くならないようにセクハラは受け流せ」と言った女性は昇進が望めない立場の女性だった。セクハラを許容して我慢してきた女性ほど「セクハラはあっても仕方ない。」「あっても我慢しなさい」とクソバイスする傾向にあると感じる。昔から日本で立場の弱かった女性は穏便に物事を荒立てないのが美徳とされているのだ。

それで私達は強くなれるのだろうか。権力を手にできるのだろうか。性暴力のない世界は手に入るのだろうか。私達の産んだ娘を安心して世に出せるのだろうか考えてほしい。NOとはっきり拒絶しないことの恐ろしさを。

男性にもよく考えてほしい。日頃、女性に対してどんな言葉を投げかけているか。男性の友人と卑猥な話になり「女性にセクハラをした」と知ったとき立ち上がってその友人を批判する勇気があるか。

 

女性も男性との会話で自分は特に不快だと感じない出来事でも他の女性は不快に感じていたら、男性を制する勇気があるか。

 

意識は小さなところからも変えていかなければならない。怒っていかなければいけない。これは貴方と女の子の未来のためでもある。

 

よく考えてほしい。