おーえる放浪記

毒親から離れ、色々なところを転々としています。ミスiD2019ファイナリスト。Twitter@MC88009062

男性を愛するとは

 

この前、わたしが上海にいたころに一緒に住んでいて「姉さん」と慕っていた人と会った。

 

相変わらず優しくて、朗らかで、私よりも気を使ってくれて、わたしは姉さんがほんとに大好きだ。そんな姉さんがふと、わたしにこんなことを話した。

 

「子供を堕ろしたの」

 

姉さんには婚約者がいた。でも長い間結婚式の知らせもなかったので本人に聞いたら「別れたの」と残念そうに笑った。妊娠が発覚したのはその少し前だったらしい。相手の都合で姉さんは誰にも相談せず、一人で子供を堕ろしに行ったのだという。

 

わたしは姉さんが相手の男と付き合ったときからその男がいけ好かなかった。一度だけその男と話したときに私の交際したことのある男性の人数を聞いて、そんなに多くないのだが「多いね」とつぶやいて顔をしかめた。変な人だな。処女信仰なのかなという印象だったが裏腹に姉さんと男は仲を深めていった。幸せそうだった。ほんとにいつも夫婦みたいに寄り添っていた。だから別れたと聞いたときはびっくりした。さらに妊娠までしてたとは。

 

「今日、誰かに初めて話したよ」

 

私は表情には出さなかった。いや、下手だから出てたかもしれない。悲しかった。

 

わたしは姉さんのこと大事に思ってるのになんであの男は姉さんのこと大事にしてくれないんだろう。と思った。

 

「悲しい」なんて泣いたら姉さんもっと傷つくと思って静かに「そっか大変だったね。」というようなことを言った気がする。私は姉さんが好きだ。姉さんはその男が好きだった。でもその男は姉さんを大事にしなかった。なんでだろうね。意味がわからない。

 

わたしを「交際経験が多い」と蔑んだ男の目を思い出した。「僕は君の上司だから頼ってね」と言いながら私のひざを触ってきた上司、「君と付き合いたい」と言いながら私をセクハラ上司の隣に座らせお酌させる先輩、「遊ぼう」と声をかけてきて私に陰部を見せてきた知らないおじさん。表では優しく裏では自分の娘を犯していた友達のお父さん。事故って横たわる友達を一瞥しただけで帰った旦那さん。わたしが一番辛いとき助けてくれず、未だに何考えてるかわからない私の父。頭痛がして全部走馬灯みたいに頭をよぎって、ストレスで視界がぷるぷると震えた。

 

また動かなくなる訳にはいかないのだけど、私はすっかり弱くなってしまってどうにもこうにも歩き出せない。

 

わたしにはもう無理だ。男性の前でたくさんお酒を飲むことも自分をさらけ出して話すことも信頼することも恋をすることも無理だ。